再加熱カートとは?新調理システムの導入に必要不可欠?
病院や介護施設では、温かくておいしい食事の提供をスムーズかつ安全に行うことが求められています。しかし、人材不足や早朝出勤などの業務負荷が課題となっているようです。そこで、食事提供の課題を解消する方法として再加熱カートを用いた新調理システムの導入が進んでいます。
しかし、再加熱カートをよく知らない方も多いでしょう。この記事では、再加熱カートについて詳しくご紹介します。
再加熱カートとは?
再加熱カートとは、チルド状態のまま盛りつけた料理を保存・再加熱するニュークックチルという調理方法に対応した食事用の配膳車です。従来、加熱前の先盛りつけが難しいとされていたご飯や汁物も、先盛りつけできるシステムを搭載しています。一度に多くの食事をスピーディーに提供する必要がある、病院・社会福祉施設などで導入が進んでいるようです。
盛りつけた料理は、トレイごと再加熱カートの中で配膳直前までチルド保存できます。配膳時間を設定することで自動加熱されるため、配膳時間にカートごとを移動させ、料理を盛りつけたトレイを取り出すだけですぐに食事を提供できるのが魅力です。
また、再加熱カート内は温食と冷食の区域をわけられるため、再加熱時に温食のみ温められます。
再加熱カートの加熱方式の種類
再加熱カートの加熱方式は、熱風式・IH式・加熱蒸気式・マイクロ波式の4種類あります。
熱風式は、カート内に熱風を循環させることで加熱調理を行う方式です。現在使用されている多くの再加熱カートが熱風式を採用しています。熱風がカート内を循環することで食事に均一に熱が伝わるのが特徴で、煮物の煮崩れや麺類の伸びも防止できます。
しかし、食器によっては熱風の影響で色焼けを起こす可能性があるため、耐熱性や耐変色性の高い食器を使わなくてはなりません。
IH式は、電磁誘導加熱方式であるIHで加熱調理を行う方式です。1トレイあたり主菜・副菜・汁物の3点の加熱ができ、それぞれのメニューに応じて加熱時間・火力の調整ができます。また、ひとつの食器から加熱することができ、加熱したメニューの数だけ電気を消費するため、省エネ効果が高いもの魅力です。
過熱蒸気式は、過熱水蒸気を使用して加熱調理を行う方式。熱伝導性が高いため、短時間で加熱処理できるのが特徴です。また、高い温度と大きな熱量をもっており、面全体を均一に加熱できます。ご飯はふっくらと仕上がり、揚げ物もサクサクとした食感に仕上がります。
マイクロ波式は、電子レンジと同様の原理でマイクロ波によって加熱処理を行う方式です。料理の中心から温めるため、加熱後に外側が熱く、中は冷たいという状態を避けられます。また、加熱時の熱によって料理の品質が低下することを防止できます。味や風味だけでなく、食材の色合いもきれいに保たれやすいのが魅力です。
再加熱カートの構成機器
再加熱カートは、ステーション・カート・インサートの3つで構成されています。
ステーションは、カート内に冷気や熱風を送り込むのが役割です。チルド保存時には冷気を送り込んで食事を冷やし、再加熱時は熱風を循環させて加熱調理します。
カートは、熱気や冷気を逃がさないように閉じ込めるのが役割です。気密性が高く、インサートを入れて使用します。再加熱後はカートごと移動させて配膳します。
インサートは、料理を盛りつけたトレイを収納するラックと代車が一体になったものです。カートに入れて使用します。棚は簡単に着脱できるため、隅々まできれいに洗えて清潔に保てるのも特徴です。
再加熱カートで使用できる調理方法
再加熱カートで使用できる調理方法は、クックチル・クックフリーズ・真空調理・ニュークックチルの4種類です。これらは新調理システムと呼ばれています。
クックチル・クックフリーズ・真空調理の3種類は、調理後にいったんチルド保存し、提供前に再加熱してから盛りつけるのが特徴です。
ニュークックチルは、調理後にいったんチルド保存し、チルド状態のまま盛りつけ、盛りつけた状態で提供前まで保存し、提供直前に再加熱する調理方法することができます。
クックチル・クックフリーズ・真空調理の違い
クックチルは、通常の加熱調理後、30分以内に冷却を開始し、90分以内に中心温度3℃以下まで急速冷却して保存します。3℃以下で保存して必要な分だけ再加熱して提供する調理方法です。適切な調理方法と温度管理を行うことで製造日を含めて5日間保存できます。
クックフリーズは、通常の加熱調理後、30分以内に凍結を開始します。90分以内に中心温度を-5℃以下、120分以内に-18℃以下まで急速凍結して冷凍保存し、提供するタイミングで再加熱する調理方法です。
凍結により素材の風味や食感が損なわれる場合もある反面、−18℃以下で保存することによって最大8週間程度の長期保存ができます。
真空調理は、下処理をした食材を調味料と一緒に袋詰めして真空状態にし、袋のまま加熱調理して急速冷却または急速凍結をしてから保存し、提供前に再加熱する調理方法です。加熱調理後に手や空気に触れることがないため、素材の乾燥や汚染を防げるのが特徴。95℃以下で低温調理するため、やわらかく仕上げたい肉類や煮崩れしやすい煮物などの調理に適しています。
まとめ
再加熱カートは、病院や介護施設などで提供する食事の配膳作業の効率アップと衛生面の安全を両立できる配膳車です。再加熱カートを使用することで、チルド状態で盛りつけ、配膳直前に再加熱して提供するニュークックチルという調理方法も導入できます。
食事の配膳作業などにかかる負担を軽減することで、スタッフにも余裕が生まれ、施設利用者などへより丁寧な対応ができるようになるのがメリットです。食事の提供に関する作業を少しでも楽に安全に行いたい場合は、再加熱カートの導入を検討してみてはいかがでしょうか。