介護施設内の食事の衛生管理をする上で注意するべきポイントとは?
高齢化社会が進むにつれ増えているのが、介護施設です。そしてどの介護施設でも、利用者の方にとって、食事の時間はとても楽しみな時間になります。そんな楽しい食事の時間を提供するために欠かせないのが、食事の衛生管理です。この記事では、介護施設で食事の衛生管理をするときの注意すべきポイントをご紹介します。
食事の衛生管理は介護施設運営の基本
介護施設の利用者様にとって食事は、楽しいものであるとともに、これからもずっと元気でいるための大切なものです。そのため、食事のおいしさはもちろん、食中毒などの食品事故を起こさないための衛生管理が必須になります。
とくに抵抗力の弱い高齢者の方が食べる食事ですから、食事の衛生管理は介護施設を運営するにおいて基本中の基本ともいえます。
食事の衛生管理を怠るとどうなる?
食事の衛生管理は、食材の洗浄、調理器具の洗浄や消毒、食材の温度管理、調理する人の手洗いなど、基本的なことがほとんどです。しかしこの基本的なことができていないと、最悪の場合、集団食中毒を起こしてしまうこともあります。食中毒は、場合によっては命を奪うこともある、非常に怖いものです。
また、介護施設全体で集団食中毒を起こしてしまうと、その施設を利用する人が激減し、施設の運営自体が難しくなってしまうでしょう。介護施設の利用者の方はもちろん、介護施設自体を守るためにも、食事の衛生管理は徹底しなければならないのです。
食事の衛生管理をする上で注意するべきポイント
「食事の衛生管理」とは、具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか?ここからは、介護施設で食事の衛生管理をするときの注意するべきポイントを見ていきましょう。
調理服を着るときの順番
介護施設で食事を調理する人は、調理服に着替えるはずです。そのときに見落とされがちなのが、調理服を着る順番です。調理服を着るときは、最初に調理帽をかぶり、次に服を着替えて、その後靴を履き替えます。
そして最後に、よく手を洗ってください。この順番を間違えてしまうと、雑菌が服についたり、髪の毛が服についたりして、不衛生になってしまいます。調理服を着る順番は、きちんとマニュアル化して徹底しましょう。
調理器具の滅菌
滅菌処理はさまざまな方法がありますが、包丁やまな板などの調理器具の滅菌は、消毒剤や洗剤ではなく、加熱処理をしてください。このとき、ただ適当に熱湯をかけるだけではなく、主な食中毒の原因となる菌の熱処理温度と時間を覚えておくことが大切です。
食中毒の菌として非常に多いO157は、75℃のお湯を1分間、ノロウイルスは、85℃のお湯を1分間かけることで滅菌ができます。
食材の温度管理
食材は、管理するときの温度を間違えると、菌が繁殖してしまい、食中毒を引き起こします。厚生労働省が定めている大量調理施設衛生管理マニュアルでは、食肉は10℃以下、生食カキは10℃以下、液卵は8℃以下という基準が設けられています。
しかし、これらの基準は、学校給食など健常者が食べる食事の衛生管理基準です。そのため介護施設では、これらの温度より2℃低い温度で管理するのが望ましいでしょう。
厨房の床は常に清潔に
厨房の床は、常に清潔にしておくことが基本です。ほとんどの厨房がコンクリートにタイル張りでできており、水で流せるようになっています。ただ、調理中に床に落ちた食材や調味料がそのままだと不衛生なので、水で流す前にも、こまめに掃除をして綺麗にしておきましょう。
食堂の衛生環境
介護施設の衛生管理では、調理する厨房だけでなく、食堂の衛生環境も大切です。介護施設によっては、玄関を入ってすぐのエントランスやデイサービスを行う空間と食堂の間に、仕切りがないところがあります。
しかし、それでは外からの雑菌が食事に入ってしまう可能性があります。そのため、食堂は2階以上の居住スペースに設けるようにしましょう。
介護職員の衛生管理
介護施設では、利用者の方によっては介護職員が食事介助をします。このときに注意するべきポイントは、介護職員の服装です。介護職員は、食事介助以外にも、排泄介助なども行っており、基本的にはずっと同じ服装です。
そのため、食事介助をするときは、食事介助用のエプロンを着用するようにしましょう。もちろん、食事介助前の手洗いも必須です。
配膳時の帽子着用
厨房で食事を作る調理員は、食事に髪の毛が混入しないよう、調理帽を被っています。ですから、食事を配膳する職員も、配膳時は必ず帽子を着用するようにしましょう。
食堂の清掃状況
厨房だけでなく、食堂も常に清潔にしておく必要があります。食事を摂るテーブルを拭くことはもちろん、椅子や床も綺麗かどうか、常にチェックをしておきましょう。
再加熱カートを導入して食品の安全を守ろう!
ここまで、介護施設の食事の衛生管理ポイントをご紹介してきました。それらのポイントに加えて、さらに安心安全の食事を利用者の方に提供するためにおすすめしたいのが「再加熱カート」の導入です。
再加熱カートとは、加熱調理した食事を急速冷却し、チルド状態にしてから盛り付けしたものをセットするカートのことを指します。そして、配膳時間に合わせて再加熱することで、すべての利用者の方に、できたてで温かい食事を提供できます。
また、再加熱カートは、衛生面でも優れています。それは「チルド状態で盛りつける」という点にあります。チルド状態にしてから盛りつけることで、箸やトングを使わずに、手袋をつけた手で盛り付けることが可能です。そのため、盛り付け時に菌が入ることを防げます。
このように再加熱カートは、利用者の方に温かい食事を提供できるだけでなく、衛生面でも優れたカートなのです。再加熱カートを導入すれば、食事の配膳が効率よくできるほか、食品、そして利用者の方の安全を守ることができます。
高齢者の方が利用する介護施設では、食事の衛生管理はとくに気をつけなければなりません。高齢者の方を守るために、今一度施設内の衛生管理方法を見直してみてください。また、再加熱カートを導入することで、温かくて美味しい食事を、安全に利用者の方に提供できます。徹底した衛生管理で、高齢者の方に楽しい食事時間を作ってあげましょう。