再加熱カートとは別に下膳車も必要?配膳車と分けたほうがよい理由とは
衛生管理の観点から、再加熱カートと下膳車を分けた方がよいと考えられています。しかし医療介護施設のなかには、さまざまな理由で分けていないところも少なくありません。そこで今回の記事では、再加熱カートと下膳車を分けた方がよい理由と、別々にすることでどんなメリットがあるのか詳しく解説します。
病院や介護施設では配膳車と下膳車を分けている
衛生管理のため病院や介護施設では配膳車と下膳車は分けるほうがよいです。しかし医療介護施設の基準となっている厚生労働省の衛生管理に関するマニュアルでは、配膳車と下膳車を分けるべきと書かれていません。
また、分けないことに対する罰則はなく、保健所による検査で別々にするよう指導を受けることがある程度です。この指導は努力義務を促すものですが、最終的な判断は医療介護施設に委ねられています。
とある企業の調べによれば、配膳車しか使っていない病院は多くあります。また古い病院ほど配膳車しか使っていない場合が多いです。
ただしそれらの病院は、衛生管理について重要性を理解していないわけではありません。単純に建物を建てる際、保管スペースを設けていなかっただけです。そのため、徹底した消毒をするなどして衛生管理に努めています。
一方で新しい病院の場合は、そうしたことも踏まえて両方を収納できるスペースを確保し、衛生管理に基づいた食事の提供を行っています。
配膳車と下膳車を分けたほうがよい理由
厚生労働省の衛生管理に関するマニュアルは食中毒の発生予防を目的に作成されています。マニュアルでは、厨房での調理や食事場所までの配膳に関する管理方法を重要視しているものの、下膳については書かれていないのです。
しかし食中毒の予防には「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つが重要です。そのため食材に付着している菌をほかの器具にうつさない配慮、細菌が好む環境の予防、食器や機械についている雑菌を消毒しなければなりません。完璧な衛生管理のためには、配膳車と下膳車を分ける必要があるのです。
交差汚染を防止する
配膳車と下膳車を別々にすることで、まず交差汚染が防止できます。交差汚染は汚物度の違うものが交わることです。とくに食後の残飯には唾液が混じっているため、そのまま配膳車の中へ入れてしまうと雑菌が繁殖してしまいます。
さらに患者や入所者では食事を終えるペースが違うため、配膳車を待機しなければなりません。待機している間、配膳車は消毒できず、雑菌のついた残飯が放置されるため不衛生です。ただし、下膳を下膳車で行えばその心配がありません。
待つ時間が長くなり仕事が非効率となり安全性が下がる
配膳車を待機させている間に雑菌の繁殖はもちろん、厨房業務が滞ってしまいます。業務のしわ寄せは、徹底した掃除や消毒作業のミスにつながるでしょう。また作業に余裕がなくなると、普段できている安全作業にもミスが生じやすくなるため非常に危険です。
残飯によって故障する可能性がある
配膳車は食事かすが詰まりにくく、掃除しやすい設計となっています。提供前は蓋をしているため、こぼれても少量で済むことが多く、清潔が保てます。しかし食事後の食器やおぼんには食事かすが、多く残っていることも珍しくありません。
その結果、食事かすが原因で配膳車が故障してしまいます。故障すると買い替えが必要となるため、下膳車を買うよりも多くのコストが必要です。
再加熱カートとは別に下膳車があればより衛生的
食中毒の発生件数は少なくなっており死者数もわずかです。それでもなんと年間約1,000件以上の事故が起こっています。そのため医療介護現場は衛生管理の意識を高めなければいけません。
再加熱カートと下膳車を分けることで食中毒の発生を予防できます。これは医療介護施設にとって大きなメリットです。食後の残飯には雑菌が多いため、再加熱カートに戻した際、カート内に残飯の雑菌が付着し、雑菌が増殖する可能性があります。
また再加熱カートよりも下膳車の方が掃除や消毒をしやすいというメリットがあるため、非常に衛生的です。衛生を保つ必要がある厨房では、食中毒の原則である、菌に触れさせない、菌を増やさない、菌をやっつける(除菌)ことを意識した環境を整えましょう。
まとめ
衛生管理の観点から再加熱カートと下膳車を使い分けることは、食中毒予防のためによいとされています。しかし実際にはコスト面や厨房の保管スペースの問題によって実践できていない病院が多いのが実情です。それでも再加熱カートと下膳車を使い分けることで、交差汚染の防止、業務効率の向上、配膳車の故障リスクの軽減といったメリットがあります。
また下膳車の利用によって、厨房の衛生状態を保つことができ、結果として食中毒の予防につながります。保管スペースの問題はあるものの、再加熱カートと下膳車を使い分けることのメリットのほうが大きいため、医療介護施設にすぐ導入されるべきといえます。